
「さくらあい」(さくら総合研究所発行月刊誌)1995年7月号より転載
カジュアルで、カカトが低くスポーティ、それでいてオシャレでエレガント。
女性のあいだでは、知らないひとはいないとさえいわれる婦人靴「ゴルフ」。
この1ブランドで年商30億円という常識破りのヒット商品を生み出したのが、
婦人靴のリーディングカンパニー、株式会社シャミオールである。
「昭和58年頃、世の中はカジュアル化の時代になっていました。
ところが、ヤングミセスがはけるいい靴がないのに気がついた。
はきやすく、機能性に富み、ちょっとオシャレ。例えば、幼稚園の送り迎えにもはける。
『そんな靴を作ってくれ』と若い企画チームに頼んだのです」と
大澤重見会長は「ゴルフ」の誕生を振り返る。
同社は昭和44年に、中小の靴メーカー3社が合併して設立された。
「やがて訪れるであろう自由化に備えて、国際競争力のある商品をつくらなければいけない。
それには、創造性豊かなものを生み出す企画力、その付加価値を高める技術力、
そして、リーズナブルなプライスが必要です。 そこで、企画力、技術力、営業力と、
それぞれ特色を持つ3社が合併してシャミオールができました。
それぞれの得意分野が異なり、役割分担がうまくできたのが成功の1因でしょう」(大澤会長)

同社には、ユニークな経営方針がいくつかある。その1つは、「腹八分目経営」である。
「しっかりいいものを作って、ていねいに売る。」だから得意先はふやさない。
1社、1社を大切にし、たとえ商品が余ったとしても他の売り先を探すようなことはしない。
それが信用につながる。また、作り過ぎないことも大切で、作り過ぎは商品価値を
自ら下げることになるという。
例えば、1万足売れそうであっても、9千足で止める。そして、残りの1千足は次の商品で対応する。
そうすれば、顧客に次の商品への期待感を持ってもらえる。商品も欲張って10人中10人の
満足を狙わない。10人のうち1人に確実に満足を与えるものを作る。

もう1つは「適時、適品、適量」である。大量消費の時代から、多様化の時代になり、
靴も多品種少量 生産に対応しなければならなくなった。
しかも、必要な商品を必要なときに必要なだけ供給することが、要求される。
そのため、いち早くコンピュータ管理を進め、業界ではじめて、かんばん方式を導入した。
必要な分だけ仕入れて、必要な分だけ作る。見込み生産は行わず、すべて受注生産である。
在庫も最小限しか持たず、1足から千足までの受注に対応できることになった。
実は同社の生産体制には、もう1つの秘密がある。
同社は自社工場の他に約20社の協力工場を持っており、合計すれば日産6千足の生産能力となる。
これらの協力工場は、本当にすばらしい製造技術を持っている。
売れる商品企画を提供すれば、いくらでもいい靴を作ってくれる。
同社としては、自ら設備投資をすることなく、生産能力を確保できるわけで、利益率もいい。
優れた企画力があればこそできることである。

「売れる靴を作る。」簡単に言うが、実行するのは易しいことではない。
「ゴルフ」に続いて、現在「エドウィン」「サムシング」といったブランドがヒットしている。
問屋からのOEM(相手先ブランドによる生産)の依頼も多く、同社の優れた企画力を裏づけている。
では、このように、次々とヒット商品を生み出す同社の企画力の源泉は何だろう。
同社の企画開発スタッフは実に55人。 全従業員の約3分の1を占めている。
「開発スタッフ2、3人という靴メーカーが多いのです。 売れる商品を作るために、
デザイン、機能、素材の研究を徹底的にやりました。そのためには、どうしてもこのくらいの人数は
必要でした」 と大澤会長は企画開発に対する並々ならぬ姿勢を語る。
しかし、ただ人数が多ければいいというものではない。
いかに優れたアイデアでも、それが十分に生か椀ξ周ε)???"される環境がなければ、
ただの思いつきで終わってしまう。個を尊重する姿勢が大切なのである。
「護送船団的な横ならびの発想では『よそにないもの』は生まれてきません。
個性を大事にし、たとえ新人のアイデアでも真剣にディスカッションします。
『個性集団たれ。みんなに迎合してはならない』といつも言っています」
社員教育にも力を入れている。毎年20人以上がヨーロッパへ研修に行き、
最新ファッションにふれ、最新情報を収集している。
その他、国内のファッションセミナーや業界のセミナーにも積極的に参加している。
「しかし、重要なのは、私を含めた幹部の教育です。中小企業においては、
トップの個性がそのまま表に出ます。社員の上に立ってきちんとリーダーシップを
とることが大事です。
私が社員1人ひとりに気を配るのは困難ですが、社員が私の欠点を見抜くのは、
3日もかからないでしょう。 逆にいえば社員が私を教育するということです。
社員に育ててもらう、そういう心構えが大切だと幹部には言っています。」(大澤会長)

同社がめざすのは、たんなる製造業から脱皮した「創造業」。
よそと競争するのではなく、常に創造性をもって、よそにないものを作る。
そして、その価値観を認めてくれる顧客とともに成長する。
そういったクリエイティブな面で 社会に貢献したいという。
市場調査をきちんと行い、時代を先取りする目を持つ。
さらに、投資も次の展開をにらんで行う。 設立当時、従業員80名、年商5億円だった同社が、
現在170名、90億円にまで成長した。 その間1度も赤字を出すことなく、
5年ごとに工場や事業所を新・増設してきた。 利益は、すべて再投資してきたわけである。
「創造力」を武器に、まっすぐ未来をみすえて進む同社に、今後も停滞はなさそうだ。
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